原発

福島第一原発事故をもたらした「電源喪失」のリスクをスルーした安倍首相の政治家としての資質

3.11の福島第一原発の事故。東日本の国土の多くが汚染され、「アンダーコントロール」という安倍首相の言葉とは違って、実際のところ汚染水は今だに海に漏れ続けている。

この福島第一原発事故の原因は抽象的な言い方(地震・津波・政府の対応・歴代自民党のエネルギー政策etc)もできるが、具体的にはやはり津波によるバックアップ電源の喪失、そしてそのことによる原子炉の冷却機能の喪失が原因と言えると思う。

そして突き詰めれば、このバックアップ電源喪失という状況を作ったのは人為的な不作為であり、それも事故以前のある時点で、当時の自民党政権が指摘されていたリスクに対応しなかったのが最大の過ちだったのではないかと思う。

小泉政権下でも外部電源喪失による崩壊熱の冷却が不可能になる事態について問い質していた共産党の吉井英勝衆院議員(当時)は、2006年第1次安倍内閣当時、「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」を政府宛に提出し、その中でスウェーデンのフォルクスマルク原発1号機で、この発電所が備えるバックアップ電源四系列のうちディーゼル発電機とバッテリーが機能しなくなった事例をあげ、「日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか」と指摘した上で、「仮に、フォルクスマルク原発1号事故と同じように、二系列で事故が発生すると、機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか」という突っ込んだ質問をしていた。

また、

大規模地震でスクラムがかかった(注:停止した)原子炉の核燃料棒の崩壊熱を除去するためには、機器冷却系電源を確保できることが、原発にとって絶対に必要である。しかし、現実には、自家発電機(ディーゼル発電機)の事故で原子炉が停止するなど、バックアップ機能が働かない原発事故があったのではないか。過去においてどのような事例があるか示されたい。

引用:衆議院HP「答弁本文情報」より

として、外部電源喪失の具体的事例などを挙げつつ、高圧送電鉄塔の倒壊による電源喪失のリスクや、機器冷却系が働かなくことによる原子炉の安全性について注意や調査を促していた。

ところが当時の安倍首相は、この質問主意書に対して真面目に答えているとはいい難い返答をしている。

我が国の実用発電用原子炉に係る原子炉施設(以下「原子炉施設」という。)の外部電源系は、二回線以上の送電線により電力系統に接続された設計となっている。また、重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器がその機能を達成するために電源を必要とする場合においては、外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計となっているため、外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である

引用:衆議院HP「答弁本文情報」より

いや、吉井氏が聞いているのは、日本と同じタイプの外部電源からの電力の供給を受けられなくなった事例が存在しているが、そういう事態になった場合にどうするかということであり、国民の安全と生命を守るためにも、早急に現状を調査し、外部電源の喪失が起こらないよう備えをしておくべきだということでしょう。

最近では災害時の安倍政権の対応が問題にされているわけだが、当時から国民の生命と安全に関わるような重要な質問に対しても、こういういい加減な答弁をし、結果として広範囲での国土の汚染と膨大な農作物や海産物が食べられなくなるような事態をもたらしているわけだ。

原発事故が起こった場合にどうなるかというのは、政治家でなくても普通の人ならチェルノブイリの事例等でわかっているはずである。なので、こんな原発の危険性についての指摘には、普通の感覚を備えた人間であれば迅速に動き、吉井議員の指摘したような問題を調査し、問題があると分かればバックアップ電源の強化など何らかの対策を講じていたはずである。

まして安倍氏は国民の生命と財産を守るために働く公僕であるべきなのに、こんなにリスクに対する想定を軽く見ていてよいわけがない。安倍氏には政治家として国民の生命財産を守るという意志や、リスク管理についての最低限の資質が欠けているとしか言いようがない。

安倍首相に絡む様々な疑惑や政治手法への批判や責任追及は勿論重要だが、事の重大さを考えるなら当時の安倍氏の答弁と対応への責任、このことについてももっと強く追及されてよいはずだ。

 

 

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