※各政党の個別の政策比較の記事をいくつか書こうと思ったのだが、①衆院選前まで政策を詰める政党が多く、今現在から変わる可能性があること、②公式サイトを見ても分かりにくいこと、③面倒くさい・・・ということもあり、一旦はこの原発政策の比較だけにしておこうと思う。また選挙が近づいたら、消費税やBI、コロナ対策など、自分が関心あるテーマで各政党の政策を比較する記事を書いてみたい(予定)。
衆院解散総選挙はいつ頃?
政府与党は衆院解散総選挙をいつ頃やるのか?
菅首相の任期は来年9月末までなので、それまでには解散総選挙をやるのは確実だ。
次期は当初年内とも言われていたが、政府が新型コロナ対策を優先させるということで、どうやら来年4月頃になるのではないかと言われている。
政府・与党は来年の通常国会について、1月18日に召集する検討に入った。感染が再拡大した新型コロナウイルス対策を盛り込んだ今年度第3次補正予算案を1月中に成立させる。新型コロナ対策を優先させるため、自民党内で取り沙汰される1月中の衆院解散・総選挙は見送り、解散時期は来年4月以降になる公算が大きい。
引用:https://mainichi.jp/articles/20201127/k00/00m/010/441000c
もう半年以内に選挙があるのならば、この際各政党の政策の違いについて、ブログで比較していくのも面白かろうと思っている。
そういうわけで、今後少しづつ各政党の政策の違いについて、私自身の関心(偏っているかもしれないが)に沿ってザックリと各政党のホームページ(公式サイト)を参照しつつ政党間の政策を比較した記事を書いてみようと思う。
今回は個人的に最も関心のあるテーマの一つ、原発政策。
各党は原発およびエネルギー政策をどうしたいのか?
簡単に比較してみた。
自民党
公式サイトの「重点政策」より。
徹底した省エネ、再エネの最大限の導入、火力発電の高効率化、などの方針を堅持しつつ、安定供給と低コスト化を両立するための技術革新を図ることで2030年エネルギーミックスの確実な実現を目指します。また、2050年に向けたエネルギー転換・脱炭素化を目指し、あらゆる選択肢を追求します。
引用:https://www.jimin.jp/policy/promise2/
「原発依存度の可能な限りの低減」と書いているが、安倍政権の時は海外に原発輸出を推し進めていたし、2018年7月閣議決定では「エネルギー基本計画」で、原発を「重要なベースロード電源」として将来も維持・推進することを明言。
さらに「基本計画」には2030年度の電力需要の20~22%(2200~2300億kW時)を原発で賄うとする「長期エネルギー需給見通し」を明記している。
要するに既存原発33基は稼働を続けるし、新しく原発を作る可能性もある(島根3号と大間など)、また実際原発で二酸化炭素を減らせるかどうかは別として「脱炭素化」のためということを根拠に原発を維持したい思惑もありそうだ。
公明党
公明党は明確に「原発ゼロ」を掲げている。
東京電力福島第1原発事故を受け、国民の原発の安全性に対する信頼は崩壊しました。また、放射性物質による汚染など取り返しのつかない大損害を考慮すると、“原発はコストが安い”という神話も崩れ去りました。
こうした状況を踏まえ公明党は、
(1)太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及
(2)省エネルギーの促進
(3)化石燃料を有効に利用する火力発電の高効率化
の3本柱で持続可能な経済社会の構築と経済成長を両立させながら、原発への依存度を徐々に減らして、将来的に「原発に依存しない社会・原発ゼロ社会」をめざします。
引用:https://www.komei.or.jp/content/nuclear/
加えて「原発の新規着工は認めません。また、建設後40年を経た原発の運転を制限する制度を厳格に適用」とあり、再稼働も「原子力規制委員会が策定した新しい規制基準を満たすことを前提に、国民の理解と原発立地地域の住民の理解を得て再稼働するか否かを判断」するということだ。
しかし根本的な疑問として、自民党と組んでいる限り、この政策実現できるのか、と思う。
多分無理だろう。
立憲民主党
なぜか今現在公式サイトから「政策」が消えている。
国民民主からの合流もあったし、連合への配慮もしないといけない、しかし野党として明確に与党との違いを打ち出さないといけないということで、今現在詰めているのだろうか?
そこで2020年9月15日の結党大会で制定された綱領を見るとこういう記述があった。
私たちは、地域ごとの特性を生かした再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、あらゆる政策資源を投入して、原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します。
引用:https://cdp-japan.jp/about/principles
枝野代表も外国特派員協会での講演後の記者質疑で、司会者からの質問にこう答えている。
司会) 新しい党は、脱原発をめざすのか。
枝野) 原子力エネルギーを発電に使わないという方向に向けて、できるだけ早く実現をするということは、わが党の明確な立ち位置である。それこそ自然エネルギー分野の成長によって、エネルギーの供給量や価格という点では、もはや時間の問題で解決できると思っている。
というわけで、立憲民主も原発ゼロの早期実現を考えていることは間違いないようだが、連合とどう折り合いをつけるのか。
ともかく早く公式サイトにも掲げて欲しい。
日本維新の会
「政策提案型政党」とあるが、公式サイトに掲げてある7つの重点政策の中にはエネルギー、原発の記載はなし。
「綱領・基本方針」の中にも記載がないし、公式サイトを見る限りでは、この政党はどういう原発、エネルギー政策を実現したいのかが見えてこなかった。
ただ「活動情報」の中の「提出法案一覧」の中に「原発再稼働責任法案」というものがあった。
これは要するに既存の原発稼働に伴う、損害賠償や防災計画、周辺地域の権限、政府の責任の明確化、放射性廃棄物の最終処分責任等についての既存の不備についての改正案なので、基本再稼働を含めて基本的なエネルギー源として原発を稼働していくことを前提とした法案だ。
なので維新も基本原発の稼働には前向きで、自民と似たような立場ではないかと推測する。
共産党
共産党は政府・自民党批判をいたるところに織り交ぜながら、各分野の政策が詳細に書かれてある。
さすがに簡単にまとめるのは大変だが、ここでは「2019年の参議院選挙政策」の「30 原発問題」から拾ってみたい。
いま日本は、原発を再稼働させ原発依存社会を続けるのか、再稼働を許さず「原発ゼロの日本」にすすむのか、大きな分かれ道にあります。日本共産党は2018年3月、「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」(原発ゼロ基本法案)を、立憲民主党、自由党(当時)、社民党とともに国会に提出しました。原発の再稼働と輸出という無謀な道をやめ、「原発ゼロ基本法」を制定し、「原発ゼロの日本」を実現しましょう。
原発・核燃料サイクルから撤退し、再生可能エネルギーの大幅導入への抜本的転換の計画を立てて、実行していくよう推進します。再生エネルギーは、普及が進めば進むほど安定します。また、太陽光、小水力、バイオマス、風力、地熱といった多様なエネルギーを組み合わせれば安定します。世界ではすでに太陽光・風力は原発よりも安く、1kW時あたり10円未満で供給されています。日本の多様で豊かな再生エネルギーの潜在力を生かし、自然エネルギー大国に切り替えます。
高速増殖炉「もんじゅ」の廃止にとどまらず、新たな高速実証炉開発も中止し、再処理工場を廃止し、核燃料サイクルからただちに撤退します。
原発の廃炉にいたるプロセスの管理、使用済み核燃料の管理などを目的とし、従来の原発推進勢力から独立し、強力な権限をもった規制機関を確立します。
原発立地地域の多くは経済的に原発に依存していますが、そのように誘導した国と電力会社の責任は重大です。大きな成長が期待される再生可能エネルギーと関連する新産業の誘致・育成、原発廃炉によって可能性が広がる漁業、農業と関連産業の育成など、本格的な地域経済再生に国として取り組み、「原発ゼロ」と一体に立地自治体の住民のくらし、地域経済再建の支援をすすめます。
他の政党と違って単に「原発廃止」や「再エネ推進」と書くのではなく、自民党の現在の政策のここが問題だから、共産党はこういう政策に転換するのだ、というところが具体的に書かれているので、共産党のサイトは読むのに疲れるが、勉強にもなる。
それはともかく、共産党は原発廃止と再生エネルギー推進をはっきりと打ち出している。
高速増殖炉の廃止は公明党なども掲げているが、いわゆる原子力村(「原発推進勢力」)から独立した原発規制の権限を持った機関の設立、原発廃炉後の課題となる原発立地地域の経済再生にまで言及している点が他の党とは違うところ。
ちなみに「原発ゼロ基本法案」は野党が2018年3月に衆議院経済産業委員会に付託されたが、自民党が同委員会の開催に応じず、2019年の通常国会でも野党は審議要求したが、これにも与党は応じていない。
国民民主党
立憲民主への合流、分裂からまだ期間が浅いためか、詳細な原発エネルギー政策は公式サイトに書かれていないが、「重点政策」中に次のような記載がある。
原子力エネルギーに依存しない社会のシナリオを
- 野心的な温室効果ガス削減目標の設定
- 再生可能エネルギーへのシフトによる分散型エネルギー社会の実現
- 省エネルギー社会の実現
- 2030年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入
- 使用済核燃料の最終処分に関する国の責任の明確化
- 廃炉、使用済核燃料の減容化等を担う労働者・技術者の確保と育成
- 廃炉後の原発立地地域における雇用・経済政策を国の責任で推進
- 火力発電の最新鋭化・蓄電池技術開発等の国家プロジェクトとしての推進
2030年代に原発ゼロを目指すとし、再エネシフトによるエネルギー分散化が掲げられている。
「廃炉、使用済核燃料の減容化等を担う労働者・技術者の確保と育成」は重要な論点だと思う。
廃炉後の原発立地地域における雇用・経済政策を国の責任で推進というのは、共産党も言及している点で、これがしっかりしないと原発ゼロに向けて理解が得られない原発立地地域が出てくるかもしれない。
れいわ新選組
原発即時禁止・被曝させない ~エネルギーの主力は当面LNG火力~
この先、南海トラフ、東海地震、首都圏直下などの大地震がくると言われるなか、
原発は安全を保てるのか?その答え合わせは大地震の後になります。
つまり、その大バクチに負けた際の費用負担は皆さんの税金です。
事故が起これば、国土を半永久的に汚染し、
人々の生業を奪う発電からは撤退。国の積極的投資で日本の廃炉技術を世界最先端に。
エネルギーの主力は当面LNG火力。再生可能エネルギー100%を目指します。
東電原発事故による被災者・被害者への支援の継続、拡充を。
積極財政の政党、れいわ新選組は脱原発を訴えて政界に転身した山本太郎氏が党首だけに、「原発即時禁止」も当然だろうか。
大地震が来た時にどうなるかは地震後にしかわからない、つまり「大バクチ」というのもその通りだし、それを考慮したら個人的には「安全保障」の点からも「即時禁止」という強い表現は妥当だと思う。
原発廃止から積極投資で廃炉技術を世界一にし、被災者・被害者への支援の継続、拡充というのも、国債発行や法人税の累進課税という普段れいわが訴えている財源をもとにすれば十分可能だろう。
「エネルギーの主力は当面LNG火力。再生可能エネルギー100%を目指します」とうことだが、LNG(液化天然ガス)は現在でも火力発電の燃料の7割を占めていて主力だが、加えて二酸化差炭素も石炭や石油より少ないし、汚染物質の排出も少ない。
したがって当面はこのLNGによる火力発電を主要エネルギーにしつつ、再生可能エネルギーを経済成長の柱の一つに位置付けつつ100%を目指すというのには賛成だ。
れいわ新選組には環境問題のスペシャリストである元環境保護NGO職員の辻村ちひろ氏もいるし、数字と具体性の伴った脱原発のエネルギー政策を期待したい。
まとめ
各政党とも維新を除いて原発依存を減らす、ないしは脱原発で、省エネ再エネの促進を掲げているのは共通するところだが、原発を使うか使わないか、また脱原発に向けたスピードには違いがある。
原発について自民党は「低減」と書いているが、「重要なベースロード電源」として維持し続けたい方向。
これは原発どころか「エネルギー」についての記載自体見当たらなかった維新も同様だろう。
公明は「原発ゼロ社会」と書いているが、自民と組んでいる限り説得力がない。
立憲、共産、国民民主(旧自由党)は野党統一の「原発ゼロ基本法」を共同でまとめているので、基本は近い将来原発ゼロを実現したいということだと思うが、「即時ゼロ」の共産と原発維持に賛成の連合を支持母体とする立憲、国民とは温度差があるように思う。
これに対し山本党首のいるれいわは「即時禁止」なのでよりラディカルな立場。
思うにエネルギーや環境問題というのは国民の暮らしに直結する重要な問題であるとともに、どのような国にしていくのかということとも深くかかわっている問題だと思うのだが、れいわの山本氏ですら原発よりも経済を先に語るようになったことからもわかるように、やはり票につながりにくいということもあり、各政党ともあまり大きな扱いではないように思う。
まだ継続している福島第一原子力発電所の原発事故の処理や汚染水処理の問題もある。
共産党はエネルギーや環境問題、原発に関し例外的にかなりの文量を費やした記述だが、他の政党もそういう現実にどう立ち向かうか、もっと明確に具体的に環境やエネルギーの問題を語って欲しいし、国民の注意が向くような政策を打ち出していって欲しい。
今回各政党のサイトに掲げられた政策を見ながらそう思った。
政党名 | 原発政策 |
自民党 | ・将来も一定比率を維持(重要なベースロード電源) |
公明党 | ・将来的に原発ゼロ |
日本維新の会 | ・(稼働容認?) |
立憲民主党 | ・(原発ゼロ?) |
共産党 | ・即時廃止 |
国民民主党 | ・原発ゼロ(2030年代に) |
れいわ新選組 | ・即時禁止 |