ブログの更新がなかなかできずちょっとタイミングが遅くなってしまったが、衆院選も終わったことだし、感想でも書いてみたい。
私の選挙区では、私自身も投票した立憲の議員が当選し、応援していたれいわ新選組も山本太郎氏含め3人の衆院議員が誕生したので、今までにない嬉しさもあるのだが、全体としては予想以上に立憲が伸びず、野党共闘もむなしく自民党が絶対安定多数、維新も大幅に議席を増やし、自公維圧勝と言ってもいい結果になってしまったことは確かに残念だった。
しかしそれでも野党共闘があったからこそ自公政権に対し善戦できたと思う。
右寄りメディアや連合、ネトウヨ連中は野党の敗因は共産を入れての共闘にあったと世論を誘導したいようだが、自民と一騎打ちで負けた選挙区でもかなりの接戦に持ち込めたところが多かったことを考えると、共産の組織票が入る野党共闘の意味は間違いなくあったと思うし、今後も続けていくべきだろう。
野党共闘で自民に競り勝った選挙区は62です。また32の選挙区は一万票以下の僅差で競り負けた。自民の多くを土俵際に追い込みました。だから自民には脅威なのが野党共闘であり、更なる深化が必要です。 pic.twitter.com/gLSx8T9mpU
— かばさわ洋平 (@ykabasawa) November 4, 2021
ただこの“競り負けた”要因が何なのかということの分析は十分必要で、岸田政権が選挙日程をタイトなものにしてハロウィンや眞子さん成婚の話題とぶつけて関心を低くし投票率を下げようとしてきたことは別にして、個人的には大きく分けて二つの要因になってくるのではないかと思う。
一つは煮え切らない立憲民主党の幹部、特につい先日まで代表だった枝野氏の対応だ。
野党の共通政策に乗っておきながら、また共産党やれいわ新選組にかなりの譲歩をしてもらって自党の議員を野党の統一候補に立てることに協力してもらいながら、党首の枝野氏は10月8日の記者会見で読売新聞記者の「野党第1党として野党共闘に与える影響はどのようにお考えか」という質問に答えてこんなことを言った。
「野党共闘」というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私のほうからは使っていませんし、私どもはあくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦うと。そして「市民連合」の皆さんを通じて3党の皆さんと一定の政策について共有して、この実現にともに頑張ろうと。そうしたことの中で、共産党さんとは、いつも繰り返し正確に申し上げますが、その政策の一致している点に限定した範囲で閣外から協力をいただけると。こういうお話をしているのでありまして、あくまでも私どもそれぞれの各党との関係でありますので、その他党と他党のことについて私が申し上げる立場ではありません
引用:https://cdp-japan.jp/news/20211008_2300
共通政策も出たし、今度の衆院選では野党共闘をがっつり応援してやろうっと思っていたアンチ与党の選挙民の多くは、枝野代表のこの言葉を聞いて、“えっ”って思った人も多かったのではないだろうか。
これまでも枝野代表の煮え切らない態度は何度も見てきたが、この期に及んでもこんな野党共闘の当事者と支援者全体の士気を下げるようなことを言うのか、と。
こういう発言が共産を毛嫌いする連合や国民民主に配慮したものであることは十分分かるが、この衆院選間際の時期にこういうタイミングで言うのか、と。
衆院選期間中、枝野氏が共産候補やれいわ候補への応援演説をしたという話は全く聞かなかったのに対し、れいわの山本代表が自らが立候補を取り下げた東京8区の立憲民主吉田晴美議員の応援に入って、野党間の結束を強くするような応援演説を行ったわけだが、この温度差というか、立憲幹部のこの野党共闘への冷や水こそが、野党全体で自公維と対決するという構図を弱め、立憲民主への比例票の大幅減だったり、小選挙区での競り負けにつながったのではないだろうか。
だから選挙後の枝野代表の辞任は当然だと思うし、立憲の次の代表には連合を切ってでもしっかりとした野党共闘を掲げてもらいたい。
それにしても連合はなんでそんなに共産党との共闘を拒絶するのだろうか。
植草一秀氏のブログによれば、そもそも安保法制や原発、消費税という基本政策で真逆なのだとか。
「共産党と共闘する勢力」と「共産党と共闘しない勢力」との間にある違いは何か。
違いが重要で決定的なら、両者が同居することに矛盾と無理がある。
「共産党と共闘しない勢力」の代表が「連合六産別」と「国民民主党」。
この人々の主張は次の傾向を持つ。
1.戦争法制=安保法制を容認
2.原発稼働を容認
3.新自由主義経済政策を容認=消費税増税を容認
これが基本政策。
これに対して「共産党と共闘する勢力」の主張には次の傾向がある。
1.戦争法制=安保法制に反対
2.原発稼働ゼロ
3.共生の経済政策=消費税減税・廃止
これが基本政策。
根本的な相違がある。
この勢力が同居していることに矛盾がある。
引用:http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2021/11/post-8f3e6c.html
ちなみにこれは認識不足で自戒を込めて書いておかねばならないが、連合は決して一枚岩ではなく、この連合六産別という旧同盟系の大企業寄りの組合こそが特に反共のようだ。
「連合」は旧同盟系組合と旧総評系組合が核になって構築された連合体だが、その主導権を確保したのは旧同盟系組合である「六産別」。
電力、電機、自動車、鉄鋼、機械、金属、繊維、流通等の大企業御用組合連合だ。
連合加盟組合員数は約700万人。
そのうちの約6割に当たる約400万人が「六産別」組合員。
全労働者の6%に過ぎない。
全労働者の6%に過ぎない大企業御用組合連合が立憲民主党に介入し、立憲民主党が振り回されている。
引用:http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2021/11/post-8f3e6c.html
一方連合傘下の労働組合の中には、積極的に野党共闘の応援をする人たちもいる。
私は連合を一色には見ません。16年参院選の1人区で初の野党共闘を決断し力を発揮されたのは各地方連合の方々でした。今回の総選挙でもオール沖縄1~4区すべての勝利めざして猛奮闘、1区あかみね政賢候補勝利に大きく貢献していただいたのは連合傘下の労働組合のみなさんでした。敬意と感謝です。
— 山下芳生 (@jcpyamashita) November 3, 2021
他方で立憲と同じく連合が支持基盤の国民民主党は、「対決より解決」を掲げ、衆院選が終わった途端、野党4党の枠組みから離脱、野党合同のヒアリングにも加わらないことを表明した。
国民民主、立共社の国会対応の枠組みから離脱 https://t.co/0stimOyLxr
同時に、立民、共産が中心となってきた野党合同ヒアリングに今後も出席しないことを改めて確認した。
— 産経ニュース (@Sankei_news) November 4, 2021
国民民主は「積極財政」への転換を掲げて、衆院選の公約にも非常にいい政策が並べてあったと思うのだが、今後は維新や自公にも「是々非々」といいながら接近していくのだろうか。
「積極財政」を公約の一番に掲げるのなら、近づくべきは緊縮政党の維新や自民ではなく、れいわ新選組だと思うのだが、玉木代表の目にはれいわも批判ばかりに映るのだろうか。
それは兎も角も、今回の選挙は立憲の一部議員、連合六産別、国民民主という「反共グループ」が炙り出されたわけで、これはこれで今後の野党再編に分かり易いカテゴリーを提供するという意味でも良かったのではないかとも思う。
そう、これまでが上記にあるような「基本政策」で180度違うにも関わらず、同じ政党内にそうした両派が混在したり共闘をやっていたというのが異常だったのであって、この際「共闘派」と「反共派」で支援団体の連合の内部も含めて分裂再編をやったらどうだろうか。
ついでに共産党自身も含め、共産党と共闘できるグループが「反緊縮=積極財政」を掲げてくれれば、新しい日本のリベラル(≒リベラル保守)が「反新自由主義」「反緊縮=積極財政」でまとまって、非常に分かり易くなると思う。
野党共闘が選挙で負けた要因の一つ目が長くなってしまったが、二つの目の要因、それは野党へのアンチイメージの蔓延だ。
野党共闘は上記「反共グループ」に攪乱されたとも言えるが、同時にほとんどデマに近いイメージにも負けてしまったように思う。
自民党とも関係の深い法人アカウントであったことがばれてしまったDappiアカウントに象徴されるような、SNSやネットでの“批判ばかり”“対案のない”野党というイメージの拡散。
立憲を叩くのは簡単だが、まるでフェアではない。
自民党とは資金力が著しく非対称。Dappiの件に象徴されるように、手段を選ばないモラル無き自民党は圧倒的に、国民を騙す力が強い。
「野党は批判ばかり」等のネガティブキャンペーンに勝つのはそもそも至難の業だ。#自民禍https://t.co/Rd1B85pk6L— J.D.John (Eternal Working Class) (@JaneDoesJohn1) November 4, 2021
国民民主はいち早くそのイメージから脱却しないといけないと考えたようで、批判ばかりでない「提案」「対案」をきっちり打ち出していく政党というイメージチェンジに成功し、今回の衆院選でも票を増やすことに成功した。
また当初から自民寄りの“ゆとう”なので、少し前まで立憲に近い立場だった国民民主とは違うが、維新も「改革」のイメージを振り撒いて、立憲や共産などの野党と差別化を図ったことが躍進の一因だろう。
もっとも、維新の言う「改革」は非正規雇用の増大と公共財の民営化利権で日本のデフレ不況と衰退の原因を作ってきた竹中流の改悪に過ぎず、そんな幻想を振り撒いての躍進も、大阪でのメディア=吉本=大阪維新の気持ちの悪いスクラムの効果が大きかったことは言うまでもない。
大体、モリカケサクラでお友達への税金の流用疑惑が持ち上がり、収賄疑惑や買収による前法相の逮捕、アベノマスクやGOTOなどの愚策とコロナ無策による自宅放置死、臨時国会開催拒否や学術会議の任命拒否問題などの憲法軽視など、疑惑や無策、違反などのワードが続々出てきた自公政権の9年間の負の遺産を批判しないなどというのは、毎年のように値上がりする高い税金や社会保険料を納め続けている国民への不誠実そのものでしかないし、そういう批判封じの動きは民主主義が独裁に変わりかねない危険な態度そのものだと思う。
それに野党が批判ばかりというのも完全に間違いで、コロナ禍でも立憲をはじめ、野党は与党に対しても多くの提案をしてきたのが事実だ。
https://twitter.com/misakt1/status/1335385201422127105?s=20
また今回の衆院選においても、共闘した野党は5%減税でまとまっていたし、さらに立憲の年収1000万以下での所得税免除案やれいわの消費税廃止案などがあった。
また、れいわをはじめ、共産、社民などの一律給付案も具体的な財源と供に公約に掲げてあったのに対し、逆に自民は岸田首相が「分配」「所得倍増」を掲げながら減税案も給付案もなく、公明の給付案も18歳以下のこどもやマイナンバーカードの所有者に限定といった分断を生みかねない条件付きのものでしかなかった。
ところがメディア(とりわけテレビ各局)は徹底して野党のそうした国民寄りの政策を報じようとしなかった。
確かに党首討論なども選挙前に行われテレビで放送されたこともあったが、1ヶ月に満たない期間で全国津々浦々まで各党の政策の違いまで浸透するには、討論会だけでは不十分だったし時間が短すぎた。
せめて自民党総裁選なみに衆院選での各党の政策比較など、関連する放送をすべきであったと思うが、大企業スポンサーや自民党べったりの電通が主要な顧客のテレビ局では、まあ無理な話だろう。
だから自分から各党の政策比較を行ったり情報を取りにいかない選挙民は、この9年間でテレビ、ネット、SNSで形成された“批判ばかりの野党”というイメージから脱却するのは容易ではないのだ。
結果として“批判ばかりで対案のない”野党連中が共闘しても、山は動かないし、98年の民主旋風のような風も吹かず、政権を揺るがすほどの票は集められなくなっていたわけだ。
だから来夏の参院選に向けて野党は早急に動かないといけない。
野党再編は必至だ。
今の流れでいけば、政党は①自公連立政権、②維新+国民+立憲の一部、そして③新生立憲+れいわ+共産に別れるだろうし、そうなった方が分かり易い。
もっとも①②は緊縮増税の親新自由主義政党で、支持層は富裕層と経団連、六産別連合、③は反緊縮で反新自由主義のリベラル保守政党で、支持層は中間層以下の全国民となるわけだから、実質的には①&②連合VS③の闘いとなっていくはずだ。
ただそれは中間層以下の国民の多くが野党デマ情報で踊らされていなければという話で、実際には中間層以下の国民の多くがデマに騙されていたり、無関心にさせられたりしているため、その中のかなり層が①や②の支持者だったり無関心層だったりする。
だから野党再編でこれまでのように基本政策の違う人間同士がきっちり別れて、その上で野党共闘側は積極的に自分たちへの肯定的なイメージを固めていくべきだ
山本太郎がNHKの日曜討論に出るなどして露出が多くなれば、国民への野党の真の姿はいくらかは伝わるかもしれないが、それだけでは駄目だ。
自公政権への不正や政策への批判はこれまでどおり毅然として行った上で、そうしたことを批判することが健全な民主主義の発展にとってもいかに重要なことかも合わせて主張する。
そして、自分たちを支持することがいかに国民の生活の底上げと将来への不安解消につながっていくかを具体的な政策とともに繰り返し示していくべきだ。
野党の再編による野党共闘の強化と自己イメージの回復、その先に参院での巻き返しも見えてくるはずだ。