新自由主義

宮城県の水道事業民間委託で危惧されること

宮城県議会が水道3事業(水道用水供給事業・工業用水道事業・流域下水道事業)の運営権を一括して民間に委託することを決定した。

上下水道と工業用水の20年間の運営権を民間に一括売却する宮城県の「みやぎ型管理運営方式」で、県議会6月定例会は5日の本会議で、水処理大手メタウォーター(東京)など10社の企業グループに運営権を設定する議案を賛成多数で可決した。自治体が施設を所有しながら、運営権を民間に委ねるコンセッション方式で、水道3事業を統合しての導入は全国初。県は2022年4月の事業開始を予定する。

引用:河北新報 https://kahoku.news/articles/20210705khn000020.html

これまでも地方におけるコンセッション方式での水道の運営権委託というのはあったが、県まるごと、しかも水道3事業統合しての委託は初めて。

コンセッション方式について触れておくと、水道の所有権は自治体に残したまま運営権のみを民間に委託する方式で、2011年3月11日の東日本大震災当日に民間企業が水道料金を決定、徴収できるようにするPFI法改正案を当時の民主党政権が閣議決定したのが始まりだが、安倍政権時代の2018年12月に地方債の元金償還金以外の金銭を免除というインセンティブの付いた水道法改正案が可決したことで、さらに水道の民間委託がしやすくなる土壌が整備されていた。

今の自民党や維新は勿論、旧民主党からしてこうなので、日本の政治家には水道という命のインフラを民間に売り渡す気満々の売国奴がほんと多いなと思う。

『日本が売られる』の記述を借りると、麻生太郎は2013年にアメリカのシンクタンクであるCSISで日本の水道を「民営化します」と宣言してしまったし、橋本徹は大阪市長時代の2012年に「水道民営化構想」を掲げ、竹中平蔵に「優良事例」として紹介されたらしい。

ちなみに大阪の民営化案は水道事業が黒字だったこともあって平松邦夫前大阪市長らの反対にあい、大阪市の水道課民営化法案は否決されたが、その後現市長の吉村洋文も民営化を提案している(これも廃案)。

そして宮城でも新自由主義者として知られる村井知事が水道事業委託案を推し進めてきたが、遂にその目論見が実現した形だ。

コンセッション方式による水道事業委託は確かに所有権を自治体側に残すので、水道自体を売却する「民営化」とは違うし、今回のような規模の大きな委託になるほど民間のノウハウも活かしやすくなり、さらには地方自治体の財政的にも地方債の利払い免除、運営権の売却収入など、メリットもある。

さらに「みやぎ方式」と言われる今回の委託では完全に民間に任せるわけではないし、料金の改定にも条例改正が必要、民間による水質などのチェックを行政側もチェックする、維持管理費や設備改築費用などの管理コストも効率化と民間の資金調達力により削減されるので水道料金の値上げも抑制されるなど、県側は様々なメリットを主張している。

しかし民間委託といっても、運営する企業が利益を出して株主への配当を出さないといけないという点は何ら民営化と変わらないわけだし、利益を上げるためには場合によってはコストカットや値上げ、過剰な宣伝等が必要となり、水道料金に直接跳ね返ってくることも考えられる。

しかも世界中の水道民営化の失敗例があるだけに、本当に県側の主張通りに行くのかどうかは不安だらけだ。

水道民営化の調査機関であるPSIRU(公共サービス国際研究所)の調べでは、2000年~2015年に民営化した世界37ヶ国235の都市が再度公営化しているが、その主な理由は、①水道料金高騰、②財政の透明性欠如、③公営が民間企業を監督する難しさ、④劣悪な運営、⑤過度な人員削減によるサービス低下、などだ(『日本が売られる』より)。

死傷者まで出したボリビアの「水戦争」、水道料金が4~5倍になったフィリピンマニラの事例、蛇口をひねると茶色い水が出るようになったアメリカアトランタの事例など、とにかく「水道民営化」でググるとたちどころに世界中の評判の悪い事例がわんさかと出てくる。

だいたいその地区での水道事業を一旦企業に委託すれば、その企業は少なくとも契約期間の間は事実上その事業を独占できるわけで、利益を上げるために様々な理由を持ち出してくることは容易に想像できるはずだ。

“設備管理”や“設備投資”、“水質管理”、“災害復旧”etc、本当は株主配当や役員報酬を維持したい、上げたいというのが理由だとしても、そういった理由で値上げを要求してきたら、県側はそれを断れるのか?

いやそれは難しいだろう。

なんせ“民間のノウハウ”を用いて“効率的な運営”をするためにも必要だと言われたら、民間の技術や知識を持ち合わせていない県側にそれを反論して覆せるだけのものはないだろうし、水道事業を維持するためにも仕方ないものと割り切るしかなくなるからだ。 

ちなみに水道事業は原価総括方式なので、株主配当の増額や役員報酬の値上げもそのまま水道料金に反映されるだろう。

今回委託された民間業者10社の中には日本企業だけでなく、世界中で民営化に関わってきた水メジャー大手の仏ヴェオリアの関連会社も含まれているし、今後企業側が利益の追求を要請される中で、本当に水道料金が据え置かれるのか、また緊急時も含めサービスは滞りなく提供されるのか、それはこれから実際に見てみないとわからないが、過去の事例を見る限りそれは難しいのではないだろうか。

ただ私はこの水道サービスの維持という問題も、結局医療の問題と同じく、緊縮財政を止めない限りはこのまま民間への委託が続出し、拡大していくと思っている。

緊縮が続く限りは地方自治代の財政も改善しないだろうし、そうなると民間に委託してコストを削減しようという声は一層大きくなっていくことが予想されるからだ。

逆に緊縮を止めて積極財政に変われば、全国の老朽化した水道設備も一新できるし、人件費や管理コストも補えるはずだ。

だから緊縮を止めることこそが、こういう水道インフラの事実上の民営化の流れにも歯止めをかけることができるはずなのだが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

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